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活動写真の女 (集英社文庫)

活動写真の女 (集英社文庫)
浅田 次郎
活動写真の女 (集英社文庫)
定価: ¥ 580
販売価格: ¥ 580
人気ランキング: 197809位
おすすめ度:
発売日: 2003-05
発売元: 集英社
発送可能時期: 通常24時間以内に発送

古都京都と映画 青春と恋愛
浅田次郎の作品を眺めていますと、過去と現在の人物が時空間を越えてシンクロする作品をよく見ることがあります。本書もそんなノスタルジアを醸し出す雰囲気を漂わせながら時代を越えて繰り広げられる青春と恋愛をテーマにして書かれた小説です。

ネタばれになりますので詳しく書けませんが、昭和40年代の京都の学生と戦前期の映画俳優との美しいからみですから、そのまま映画になりそうな表現力でした。人物描写力に定評のある作家ですし、心の琴線に触れる言葉も散りばめられていますので、感傷的な気分にさせられもします。

大学紛争当時の京都大学をモティーフに黒谷、真如堂、南禅寺という東山界隈が舞台となって登場します。老舗の喫茶店も出てきますので、当時京都で学生時代を送った人には懐かしいシーンが数多く登場します。
学生の街であり映画発祥の地でもあり、世界的な観光歴史都市でもあり、今なお日本の古き景観を残す街として愛される京都が舞台ですから、それらの追体験という意味においても満足できるでしょう。

まだ太秦映画村として営業する以前の時代に繁栄した太秦界隈の各社の映画撮影所の姿が描写されています。東洋のハリウッドと称された太秦がテレビの到来と共に衰退していく頃でもありますので寂寥感も漂っていました。

著者の短編「オリヲン座への招待状」でも、昭和30年代の京都の廃れいく映画館と映画技術者の姿を描いており、この頃の京都と映画をテーマにした小説はかなり著者の心に深く根ざしたものだと言えるでしょう。

当時の京都の学生生活をうまく表現
浅田次郎には『地下鉄に乗って』『椿山課長の七日間』など、この世とあの世を結ぶ作品があるが、1970年の頃の京都を舞台にした、この作品もそのひとつです。
浅田次郎は東大に行かず、自衛隊に入ったが、その理由は生活のためと言う事になっているが、1969年の安田講堂の占拠で東大の入試がなくなったためだとも考えられる。
そのため、京大文学部に入学した主人公に映画の世界を、京都の街を語らせたのであろう、と考えられます。よい作品です。

魅惑的。
京都というのは大学生の多い町です。又、太秦にみられるような日本映画史の舞台でもあります。その二つの要素を巧く織り込んだ怪談じたての物語でした。東京生まれの主人公が、京都大学に入学し下宿生活を開始する場面から始まるのですが、京都を異国のように感じています。言葉になじめず疎外感を感じます。このあたり大学生活で初めて故郷を後にした若者の気持ちが非常に良く出ていると思いました。そして、友人ができ、恋人ができ、知り合いが増えてゆき、その町に同化してゆくわけです。映画少年である主人公は、友人の紹介で撮影所でアルバイトを始めます。その友人が、撮影所で女優の霊と出会い恋に落ちるという話になってゆくのですが、その女優の謎を探ってゆくことが、日本映画の創世記を振り返ってゆくことになっています。これと主人公の恋愛を対比させながら、青春時代の恋愛とは、実は幻なのではないか、という思いを起させるのです。日本映画へのオマージュ、古都、京都の大学生という魅惑的な要素を持った作品でした。味わえます。映画ファン、京都ファンの方にはお勧めです。



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